ニガッタハンのお風呂
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ニガッタハンのお風呂(富野)
私の小さい時に家でニガッタハン(二月堂)のお風呂いっぺんつとめはってね。三日間大きなお風呂と小さいお風呂たきました。そこへおなかに赤ちゃんのいる人が、しまい風呂をもらいに来やはった。それに入る人はお団子とかミカン・ぼた餅・コロ柿などを供えなさっておがまはった。それを入らはる人におさがりとしてあげたりして。
お風呂を家のほんそばに組み立てはってね、どんどん火もくべんならんので、畑がないと柴も確保せんならんし。
百草湯ゆうてね、蓬(よもぎ)・ジュウヤク・おおばこ・すぎな・ダイダイの皮・夏ミカンのおちたのを捨てずに皮ごときって、袋に入れはったんも覚えているわ。うちはダイダイの木があってね、ミカンの皮とかも捨てずに百草湯の中に入れて。いいにおいしましたで。そこでは垢をおとすとかそういうことはしない。ただぬくもるだけです。
うちには井戸もあって柴もあってよかったけど、ないとこは村から寄せはったんかな。うちは柴を持って行くとか、うちは何をあげるとかいろいろやった。ニガッタハンのお風呂いうてその一式が、いまの公会堂の倉庫に入ってましてんけど。ニガッタハンの信者は多くてお風呂は混浴でした。ミモチ(妊婦)の人はぜひ入れてくれと前もって頼みに来やはるのどすわ。信者でなくても子供でもだれでも入ってもろうた。ようぬくもってね。
ほして、三日間奉仕してくれはるオッチャンを頼まんなんのですわ。水を運んだり、追いたきしたり、お湯が少のうなったら水を入れたり、薬の袋を代えたり。年に一回、月の十七日やったけども、寒いときに決まってしやはるんですわ。暑い時分でもしてはったこともあるけどね。信仰心やさかいね。
施主をつとめるオイエ(御家)のお座敷に、ニガッタハンの御本尊の観音さんの掛け軸を祀ってある。祀ったおさがりを、お風呂をもらいに来た人がいただいて帰らはる。大きい風呂は十人、小さい風呂は五・六人入れたんとちがいますか。小さい風呂でかかり湯をして大きいお風呂へ入らはる。大きい方はいつもチョロチョロたいてはる。富野の人だけが入らはったね。私は学校へ行く前のことです。終わると取り壊して。ほしてね、オコシが変わったとかそんな笑い話がありましたなぁ。
写真:復元された二月堂のお風呂
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