狐の施行
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狐の施行(富野)
狐のセンギョウ(施行)は、寒い日で二、三升のお揚げの御飯を焚いて、それをナッコウジサンとか、ここらの狐のいそうな浜とかに置いとくんです。獣の間にどんな約束ごとがあるのか知らんけども、犬は絶対食べへん。狐と狸だけが食べるんです。
「どこどこのセンギョウ」と大声をあげて夕まぎれにやりましたなぁ。
食べたいなぁと思うぐらい、おじゃことか昆布のだしを出しておいしそうに炊かはりました。お揚げの御飯て決まってましたな。それはひとつも人間様は食べへん。お鍋の底に残りまっしゃろ、それをまたパっとスズメさんにあげます。それくらいして、揚げ御飯を竹の皮に包んで、私でも寒い寒いのに近所の人も来てもらって、センギョウにまわりました。また近所の人がしやはる時にはうちらも応援に行きました。
一人や二人ではやっぱり夕まぎれやさかいね。山とか浜について行ったり、ついて来てもらったこともあります。
私の知ってるかぎりでは八十年くらい前からやってはる。狐が通る場所とか決まってますわ。私は何回っも狐を見ましたで、狐は四つ足で走らしませんわ。走るときは足を揃えてカンガルーみたいな跳び方しますわ。そんで自分の山とか関係のあるとこに置きます。餌のある暖かい時にしないで、寒い寒い日にします。ざるを風呂敷にくるんでみんな寄って大きな声で叫ぶんですわ。「うちは木引新聞屋のセンギョウ」と大声をあげてね。そうすると狐が悪いことをしないで、かえって守ってくれるていわれてます。
「今日は寒いさかいに、急やけど寒センギョウするさかいに手伝うてくれるか」て近所に言うたりね。この村だけやなしに他もしたはりましたやろな。「クザエモンのセンギョウ」とか大きな声で名のってね。
写真:狐のはく製(資料館蔵)
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